月別アーカイブ: 2018年1月
コラム:「超高齢社会における最大の健康問題:認知症」
平成30年 上本伸二LIMSプログラム実施責任者 年頭所感
みなさま
新年あけましておめでとうございます。
平成24年秋に文部科学省の博士課程教育リーディングプログラムとして採択された「充実した健康長寿社会を築く総合医療開発リーダー育成プログラム」(LIMSプログラム)も早6年が経過し、今春には最初の修了生が社会に飛び立っていきます。彼らは、主専攻となる工学や薬学に加え、人体解剖や腹腔鏡手技など医学部の学生のみに許されてきた講義や実習にも立ち会い、医学、看護、介護といった医療系の知識を兼ね備えたマルチタレントです。本プログラムにより培った広い知識と技能を、新しい時代のニーズに応えるイノベーションの創造に結び付け、充実した健康長寿社会を築く「総合医療開発リーダー」として活躍していただくことを願っています。
800万人を超える団塊の世代が75歳になる2025年には、日本国民の5人に1人が75歳超の後期高齢者となり、人類が経験したことのない「超高齢社会」に突入します。できるだけ長く生活の質を保ち自律した人生を全うするためにはどうすれば良いか?この質問に答えるために、社会ニーズ、患者ニーズをしっかりと捉え、領域を超えた研究に取り組むことができる人材をさらに増やすことがLIMSプログラムに課せられた使命であると考えています。
4月からは、いよいよ文部科学省によるLIMSプログラムの事後評価が始まります。現在、文部科学省が進めている卓越大学院構想も視野に入れ、中間評価以降のLIMSプログラムの飛躍的発展が評価される様、万全の態勢で臨みたいと思います。
引き続き、皆様からのご支援をよろしくお願い申し上げます。
京都大学 医学部長・医学研究科長
LIMS プログラム実施責任者
Information of Secondary Recruitment 2018
We are accepting applications for the secondary recruitment 2018.
For further information, please refer to the following link.
⇒ Selection procedure for the secondary recruitment 2018
You can download the application guideline as follows (*application form are not included. English part from page five.)
⇒Secondary Recruitment application guideline for Master’s course and Doctoral course students
⇒Secondary Recruitment application guideline for third year transfer students
The application guideline for LIMS program can be obtained at the offices listed below after the middle of January 2018.
If you would like the guideline to be posted to you, please send a K2 (240 mm x 332 mm) self-addressed envelope (with the receiver’s name, address, and postal code clearly written) and a return stamp of 205JPY to the address below. Please also enclose your contact telephone number and write in red color “2018 LIMS program Secondary recruitment application guideline request” on the envelope.
Applicants who live outside Japan can download these guideline and forms for submission, after sending their requests by e-mail to the LIMS Office.
Location of the distribution offices:
Graduate School of Medicine |
Academic Affairs/Student Support Office |
1st floor, Faculty of Medicine Bldg. B |
Educational Affairs Branch (School of Human Health Sciences) |
1st floor, Faculty of Medicine Bldg. B |
|
LIMS Office: |
||
Graduate School of Engineering
|
Graduate Student Section, Student Affairs Division |
1st floor, Katsura Campus Administration Bldg., B Cluster, Katsura Campus |
A Cluster Office, Student Section |
3rd floor, A Cluster Office Bldg., Katsura Campus |
|
C Cluster Office, Student Section | C Cluster Office Bldg., Katsura Campus | |
Graduate School of Pharmaceutical Sciences |
Student Affairs Office |
1st floor, Faculty of Pharmaceutical Sciences Med-Pharm Collaboration Bldg. |
Address for postal delivery of the application guideline:
Research and Educational Unit of Leaders for Integrated Medical System (LIMS) Office,
Center for the Promotion of Interdisciplinary Education and Research, Kyoto University
Konoe, Yoshida, Sakyo, Kyoto, 606-8501, JAPAN
平成30年度履修生(平成30年4月入学)《2次募集》のご案内
平成30年度生(平成30年4月入学)の2次募集を開始しました。
平成30年度の2次募集の概要については、下記のリンク先からご覧ください。
また、2次募集要項はこちらのリンク先からもご覧いただけます。(*応募書類は含まれておりません。)
募集要項の配布については、平成30年1月中旬頃から下記の窓口にて順次開始いたします。
郵送で請求する場合は、角形2号の返信用封筒(送付先の住所、氏名・郵便番号を明記し、返信用切手205円を貼ったもの)及び連絡先と電話番号を記載したものを同封し、封筒の表に「平成30年度リーディングプログラム履修生2次募集要項請求」と朱書して、下記請求先あてに申し込んでください。
海外在住者はPDF様式をダウンロードして使用することができますので、希望者はLIMS事務室までe-mail にて連絡してください
○ 郵送等での請求先:
京都大学学際融合教育研究推進センター
健康長寿社会の総合医療開発ユニット事務室(LIMS事務室)
○ 窓口配布場所:(次の関係研究科いずれでも取り扱っています。取扱時間は、それぞれの窓口の指示に従ってください)
研究科 |
担 当 |
場 所 |
医学研究科
|
教務・学生支援室 大学院教務掛 |
医学部構内B棟1階 |
人間健康科学系専攻教務掛 |
医学部構内B棟1階 |
|
学際融合教育研究推進センター |
||
工学研究科 |
教務課大学院掛 |
桂キャンパスBクラスター |
Aクラスター事務区教務掛 |
桂キャンパスAクラスター |
|
Cクラスター事務区教務掛 |
桂キャンパスCクラスター |
|
薬学研究科 |
教務掛 |
薬学研究科事務室 |
コラム:京大病院の情報化戦略 —医療情報学の現場—
京都大学 医学部附属病院 医療情報企画部,
黒田知宏 教授
医療情報学は、医療を情報学視点から捉えて分析し、情報技術を適用して医療を変えることを目指す学問分野です。
京都大学医学部附属病院医療情報企画部は、病院の情報管理・経営管理の業務を担うとともに、医学研究科医学・医科学専攻医療情報学分野、情報学研究科社会情報学専攻医療情報学講座として、医学・医科学・情報学の教育・研究も担っています。医学系の学生と情報工学系の学生が臨床現場で一緒に研究することができる、我が国でほぼ唯一の研究室として、実際に医療現場のデータを手に取って分析し、新しい情報技術を実際の医療現場に適用して評価することで、情報技術のある医療現場の姿を開拓する研究を進めています。
京大病院では、情報技術を活用した様々な新しい試みを継続的に進めていますが、その多くは卒業生達の研究成果によるものです。
KING:京大病院のHIS
京大病院の情報戦略の根幹は「臨床現場に機嫌良く情報システムを使ってもらう」ことです。個人情報の秘匿性等を損なわずに情報システムの可用性を最大化することで、情報セキュリティのCIA(秘匿性・完全性・可用性)をバランス良く維持することを目指しています。2016年に運用を開始した、KING6と呼ばれる病院情報システム(HIS)では、Dynamic VLAN 技術とVDI(Virtual Desktop Infrastructure)技術を活用し、患者情報の安全性を担保しながら院内どこでも自由にPCを繋いで電子カルテとインターネット上のホームページを同時に閲覧できる環境を実現しています。また、カルテ蓄積情報を活用して半自動で診療カンファレンス資料を生成するMCP(Medical Conference Portal)など、患者情報をできるだけ電子カルテから取り出さずに業務が完遂できるような環境を、企業と共同で開発し、診療現場に導入しています。
IoTと人間機械系システム
2005年の電子カルテ導入以来、京大病院ではIoT(Internet of Things)技術の活用を進めてきました。IoT技術の導入は、医療機器から直接電子カルテにデータを送信するようにすることで、患者情報の安全性とデータの完全性を守ることに役立つと同時に、医療現場の効率性と安全性を高めるのに役立ちます。
例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)とNFC(Near Field Communication)技術を活用することで、BLEバッチをつけた看護師がベッドサイドに設置したカードリーダに体温計や血糖値系をかざすだけで、計測した体温や血糖値などのバイタルデータを記録できる、VDT(Vital Data Terminal)を導入しています。さらに、輸液ポンプやそこにセットした薬剤の情報まで半自動で取得できれば、どの薬を誰にどんな速度で注射するのかを、電子カルテ上に記録されている医師の指示と比較して、指示通りの正しい点滴が行われているかを、ほぼ自動的に確認する情報システムも実現するはずです。
このように、人間と機械(情報システム)が協力して業務をこなすシステムを人間機械系システムと呼び、位置情報・HIS情報等から得られる診療の「文脈」に応じた「ここだけ・今だけ・あなただけ」のサービスをcontext aware serviceと呼びます。診療の様々な場面でcontext aware serviceを提供する情報システム臨床現場が少しでも効率的で安全な人間機械系システムに変わっていくよう、診療の様々な場面でcontext aware serviceを提供する情報システムを開発する研究を、これからも弛まなく続けなければなりません。
ビッグデータとAI
IoTの導入で、いつ(when)どこで(where)誰が・誰の(who/whom)何を(what)どうやって(how)計測したかという4W1H情報と計測されたバイタルデータからなる客観的なデータが自動的に取得できるようになりました。一方、電子カルテには、医師がこれらの情報の内の何を見て、どのような判断を下したかという、主観的な思考過程が記録されています。これらの客観的データと主観的データを、コンピュータが処理するのに適した(機械可読性の高い)形で蓄積できれば、様々な分析に活用できるビッグデータが構築されます。様々な分析手法を適用することで新たな医学的知見を見出したり、病院の効率的な経営方法を探ったりする研究が、現在も日々行われています。
近年注目を集めているDeep Learning等の手法を活用して作られる人工知能(AI)は、ビッグデータが存在しなければ実現しません。AIは良いデータを与えなければ正しく成長できず、間違えた答えばかりを与える機械になってしまいます。ですから、医療用AIの成否は、高品質な医療ビッグデータがあるかどうかで決まります。京大病院には、10年余りにわたって蓄積してきた高品質な医療ビッグデータが存在します。京大病院は、この医療ビッグデータを活用して「人工知能の学校」となり、沢山の良質な医療用AIを世に送り出すようになるでしょう。私たちは、「人工知能の学校」を作り、運営する活動を通じて、次世代の医療を産み出す研究者たちを育てていきたいと思っています。