京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 教授
近藤輝幸
「光超音波マンモグラフィー」
乳がんの早期発見に威力を発揮するマンモグラフィー。乳房を平板で挟み、薄く広げた状態でX線透視画像を撮像し、腫瘍などの病変の有無を調べる装置です。2013年に発行された「がん検診ガイドライン」によると、40~74歳の女性に対するマンモグラフィー検査の推奨グレードはBで、学術上、有意に死亡率減少効果を示すエビデンスが得られています。しかしながら、X線による被ばくが発がんを誘発するリスクもあり、放射線を使用しないマンモグラフィーの開発が望まれています。「光超音波マンモグラフィー」は、そのようなニーズに応えるべく、京都大学とキヤノン(株)が産学協働プロジェクトにおいて世界に先駆け開発した技術であり、放射性物質あるいは放射線を一切使わず、「無痛」で、乳がんの早期発見を行う医療検査機器です。原理は、近赤外線レーザーの照射を受けた血液中のヘモグロビンが膨張する際に発生する超音波をキャッチし、その強度を画像化するものです。現在、京都大学において臨床研究が進められており、被ばくリスクの無い安全で安心なマンモグラフィーが世の中に誕生するのもそう遠くない出来事です。