組織修復材料学演習

概要

本演習では、脳動脈瘤の血管内治療技術の一つである「コイル塞栓術」について講義及び実習が行われた。講義では、脳動脈瘤治療の種類と概要について説明を受け、現状におけるコイル塞栓術の問題点と共に、血管内コイルに薬剤を組み合わせた治療用デバイスの研究開発について学んだ。更に、治療用デバイスの研究開発に用いられる機器として、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)及びX線血管造影装置を見学した。実習では、LC-MSを用いて履修生が任意に希釈した薬剤溶液を測定し、LC-MSの原理と精度について学んだ。また、実際のX線CT画像に基づいて作製された脳動脈瘤モデルを用いて、カテーテルと血管内コイルを血管腔に挿入する操作を実習した。

参加者の声

脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術の研究に関する講義、およびX線CTを基に作成された脳動脈瘤モデル(PVA製)を用いたコイル留置術の実習を行った。岩田研究室で行っている研究の一つであるコイル留置術のさらなる改善のためにコイルに薬物を添加(薬物を含有したゲルをコイルに塗布する)し、動脈瘤の基質化および内皮化を促進させようという研究で薬物の徐放化を測定するためにLC/MSが用いられているらしい。LC/MSは操作として非常に単純であり、私もDDSの研究を始めたら是非とも使用したいものである。LC/MSの測定の合間にコイル留置術の体験を行った。コイルを留置させるためにいくつもの管を使用せねばならないため,10cm先の瘤に管の先端を持っていくのも一苦労であった。今回は透明なPVAのモデルだったのが臨床の場ではX線を介した二次元的な位置情報しか与えられずさらには鼠径動脈から脳までの距離を血管を傷つけないように進むと考えると、実際の術式の難度の高さが伺われた。

脳動脈瘤に対する一つの治療方法である血管内治療ーコイル塞栓術について講義を受け、LC/MSを用いたパクリタキセルの濃度の測定、およびゲルで作成された動脈瘤モデルの模型を用いたコイル留置術の実習を行った。その中で一番興味深いのは、コイル留置術の実習である。コイル留置術というのは、プラチナ製の細い糸(コイル)をカテーテルを通して脳動脈瘤内に血液が入らなくなるまで、動脈瘤の中で糸を巻くようにして詰め込む作業である。その作業は透明で内部がしっかり見える硬いゲル製のモデルにおいても十分難しく感じたが、実際血管内部での進行がはっきり見えず、破裂しやすい動脈瘤で作業する時の難しさは想像できない。しかし、それでも開頭クリッピング術などよりはかなり安全プラス簡単な治療法であり、治療後の回復も早く、身体にかかる負担も小さい。そのため、コイル留置術をもっと操作しやすく(あるいは術中見やすく)するための改善が必要だと思った。今回の演習は、私の研究分野と直接関わっていないが、他分野の研究に触れ、臨床用の技術を体験できたのは非常に貴重な経験だと思っている。とても勉強になりました。

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