医・生活機能適応学演習

概要

本演習の到達目標は下記のとおりである。

  1. 日常生活場面において、高齢者と若年者では動きの違いがあり、高齢者では転倒などのリスクが生じやすくい状況にあることを理解する。
  2. 高齢者に支援の必要度を判定するためには多角的な評価が必要であり、有用性・妥当性の高い指標について理解する(四肢と体幹の動き(軌跡)、重心動揺、視線の動き、それらの基盤となる身体機能、認知機能など)。
  3. 高齢者の生活動作の安全性評価において、重要となる指標を標準化する必要性について理解する。
  4. 高齢者体験キット等を使用した条件下で、各指標はどのように変化するかについて学ぶ。
  5. 馴染みのある動作とない動作を行った時に、各指標はどのように変化するかについて学ぶ。

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参加者の声

今回の機器演習は、人の運動解析に関するもので、自分の研究とは異なる分野であったため、さらに知見を得る貴重な機会となった。眼球動作計測装置とモーションキャプチャマーカを装着し、フォースプレート上に立って掃除動作を行う解析では、解析ソフトがうまく動作をキャッチできるよう、細かい配慮が必要であることが分かった。マーカの位置が少しでもずれたり、服の色や、背景に置いた椅子などの色がマーカと類似していたりすると、解析ソフトが認識できなくなってしまうため、手動でマーカの位置を合わせるという作業が大変に感じた。また、同じような一定の動きに関しては、解析が容易であるが、複雑な動きになればなるほど、より多くの時間を要し、困難になるだろうと感じた。身体が不自由な高齢者を想定し、同様に掃除動作を行う解析では、体の重心の位置のずれや、動作がにぶくなることが、解析ソフトから定量的かつ視覚的に明らかになった。今回は健常者のデータをみるだけであったため、実際の高齢者の方の動きがどのようなものとなり、解析ソフトがどのような数値データを出力するのかも見てみたいと思った。人の動きを解析することは、決して簡単なものではないが、マーカを体にとりつけるなどするだけで、コンピュータを使用してモーション解析ができるというのは画期的に感じた。人の動きを定量化し、IADLなどの評価指標を作り出していくことは、これからの高齢化社会に必須であるため、今の自分の研究とは直接的な結びつきはないが、何かの形で関連付けることができたらよいと思う。

今回の演習では、人の運動を解析する3つの機器を複合的に用いて学習を行った。机の上を掃除する動作を行う際の、重心の移動、眼球の動き及び肩・肘・手首の動きをそれぞれ解析した。通常時と高齢者モデル時の同一動作を比較した場合、後者は重心の移動が多く、手の動作が細かくなっていた。これは関節の動きにくさや視野狭窄が大きく関与していると考えられる。このように高齢者の運動を多角的に評価し、介護支援の指標へと展開する。日常動作 (ADLやIADL) の指標を作製するには、多くのサンプルが必要となると考えられるため、フィールド使用に向けて装置の小型化・軽量化の必要性を感じた。

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