平成29年11月21日(火) 15:00~17:00 に医学研究科基礎医学記念講堂にて第3回医療工学特別講演会が行われ、履修生含め約45名の学生、スタッフが参加しました。
参加した履修生を代表して、L2履修生 前田信太郎さんによる当日の様子を含めた報告を掲載させていただきます。当日ご講演いただいた山川みやえ先生はじめ、ご参加いただいた方々にはこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。
2017年11月21日LIMS 医療工学特別講演会と題して、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻より山川みやえ先生をお招きして「認知症ケアから極める超高齢社会への看護学の社会実装」について講演していただいた。山川先生は公益財団法人浅香山病院にて実際に認知症患者と触れ合い、日々どのように彼らを看護するべきか研究されている。その経験に基づいて、前半では超高齢社会への変遷とともに増加している認知症患者のためにはどのような看護が求められているのか、また IoT や AI などの新しい技術を利用した新たな看護の形、我々 LIMS 履修生や工学研究者の方への期待などをお話いただいた。後半では Inochi Gakusei Forum 2017 で認知症の課題解決をテーマに学生たちが考えた solution 例や、認知症患者の立場になって考えるために行われている認知症体験 VR について紹介していただいた。
今回の講演を受け、認知症患者のために本当に求められている看護、技術とは何か考えた。”一度発達した知能が、脳の部位が変化することにより広範囲で継続的に低下した状態” である認知症は患者一人一人症状が異なる。そんな認知症患者に対する医療の形として講演中に登場したEvidence-based practice(EBP) には感銘を受けた。EBP とは研究による evidence、実際に看護、介護、以上に臨床的に携わる専門職の知識やノウハウ、患者個人の体験や嗜好、その他入手可能な情報を包括的に鑑みた上でチーム内(治療を行うもの、患者、家族等)で意思決定を共有し、患者に最も則した治療、介護を実践することである。私は臨床検査技師の資格を有するので、検査技師としてこの EBP にどのような形で携われるか考えた。それは生理機能検査(睡眠、心肺機能、脳機能等)を実施する際の患者の精神状態をチーム内で共有することである。これは長いスパンで患者を見ていく上でどのような検査結果の時に認知症の症状が出やすいのか推測するために有用であると考える。
また講演の後半で紹介していただいた Inochi Gakusei Forum 2017 での高校生たちの発表の中で実際に認知症患者を家族に有するグループの制作の過程には考えさせられるものがあった。認知症患者の繰り返し同じことを話してくる状態に対する解決法として、同じ内容を話した数だけカウントしポイントとして貯めることができ、貯めたポイントに応じて商品券と交換できるというアイデアを提案した。第三者の視点から考えると認知症の症状をカウントしてポイントとして利用するのは倫理的にどうなのかと思うが、当事者からすればこれで認知症患者の家族の相手をするストレスが軽減されるのなら、それで良いとそのチームは反論したのである(最終的には別のアイデアを提出したとのことだった)。この時、何事にも当事者意識が必要であると考えさせられた。認知症患者の立場になることも、認知症患者の家族の立場になることも認知症患者の看護、介護に当たる上で重要なことである。我々LIMS履修生が医療現場に本当に必要なものを考え出す上で必要な考え方を学んだように感じる。